甲状腺について

甲状腺とはホルモンを産生する内分泌器官です。首の前側、喉仏の下あたりに気管を包み込むように蝶が羽を広げたような形で位置しています。片側の大きさは縦4cm横2〜3cm厚さ数mm〜1cm程。内分泌腺としては最大の臓器。
甲状腺ではホルモンの産生が行われており、代謝に関係するホルモンを産生しています。甲状腺ホルモンはヨードを原料としており、食べ物から摂取したヨードを利用して造られます。
甲状腺を形作る細胞は濾胞細胞と呼び中空の小さなボールのような形になっています。血液から流れてきたヨードを濾胞細胞の中に摂り込み、濃縮され酵素の働きによりサイログロブリンと結合し甲状腺ホルモンに近い形になり濾胞腔と呼ばれる部分に貯蔵されます。貯蔵されたホルモン様物質は必要になると濾胞細胞に戻され甲状腺ホルモンの形に変換され分泌されます。ホルモンの量は大体2か月分のストックがあります。通常甲状腺に問題がなければ枯渇する事はほぼありません。

 

甲状腺ホルモンの働き
甲状腺ホルモンはタンパク質の合成を促し新陳代謝を上げてくれます。その事により体内の栄養は十分に活用され体内細胞の働きが活発になります。その事からも大人も当然ですが成長期の子供には欠かせないホルモンであります。血中のホルモン濃度を脳で感知し

 

1.視床下部より甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を分泌
2.下垂体はTRHの刺激を受けて甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌
3.甲状腺はTSHの刺激を受けて甲状腺ホルモンを分泌

 

上記のルートにより甲状腺ホルモンは分泌されています。
*幼少期に甲状腺ホルモンの量が足りないと発育障害、脳の機能障害、発育遅延を引き起こします。

 

甲状腺ホルモンには2種類あり、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)と呼ばれる2つのホルモンがあります。
トリヨードサイロニンがT3と呼ばれるのは、ヨード元素を3つもっているので略してT3と呼ばれます。同じようにサイロキシンはT4と呼ばれるのはヨード元素を4つもっているからT4と呼ばれるのです。
ホルモンとしての働きはT3の方が強くT4よりも10倍の働きをしてくれます。しかし、寿命はT4よりも短いです。そして、T3は血中の甲状腺ホルモン全体の2%程度しかありません。

 

甲状腺の病気には大きく分けて4つのパターンがあります。
・甲状腺機能亢進症:心拍数上昇、脈拍増加、下痢体重減少などの症状を引き起こす。
・甲状腺機能低下症:心拍数低下、便秘、皮膚乾燥、体感温度低下などの症状が見られる。
・無痛性甲状腺炎:ウィルスなどが原因で起こる。痛みが無い為、気付きにくい。甲状腺ホルモンが漏れ出すため、亢進症と類似の症状が起こる。
・甲状腺癌:非常にまれであり、正常細胞と同じような働きをする。成長スピードも遅いので、余り重篤な状態になり難い。

 

甲状腺の病気とは女性に多く、罹患率は男性の10倍である。そして、家族間に甲状腺の病気の者がいると、罹患率も上がる傾向にあります。

 

こういった症状が起こる背景にあるものは何か?

 

遺伝的な理由:家族や親近者に甲状腺疾患をもっている者がいる家系では甲状腺疾患になり易い傾向があり甲状腺の機能が遺伝している可能性もあると思われます。遺伝性はあまり影響ないという医師もいますが真実はどうなのでしょうか・・・。
性別:わかり易いくらいに女性の罹患者が多く、男性との比率でみても男性よりも8倍は多いと言われています。一般的には女性に多い理由はわからないとされていますが、私は子宮、卵巣が影響しているのではないかと思います。
食事:甲状腺ホルモンの原料となるヨードですが摂り過ぎることにより、ホルモン量の産生を妨げる作用をすると言われていますが、我々がヨードを摂取する機会は非常に多いので果たしてそれが原因なのかは定かではありません。
薬:精神薬の一種であるリチウムが甲状腺機能低下の原因となることがあります。
*神経伝達物質に作用し脳からの電気信号等に影響を与える薬として処方されています。
放射線:X線撮影などで喉に照射したり、被爆することにより甲状腺細胞に変異が起こり結節や癌のリスクが高まることが多いです。
ストレス:本来、私はこれが一番の原因ではないかと思います。医学的に解明されている訳ではありませんが、ストレスが掛かることにより脳からの命令によりストレス回避する為のホルモンが分泌されます。そのホルモンが分泌されることにより細胞はせっせと働く必要が出てきます。そうなると代謝する為のホルモンが多量に必要となる為、甲状腺にかかる負担が増えてきます。その負担がかかり制御出来なくなる為に甲状腺疾患を引き起こし易くなるのではないかと私は考えます。実際に過度のストレスを経験した後に罹患しているケースも報告されています。そして男性と違い女性には子宮卵巣といった重要な内分泌器官がある為、女性に甲状腺疾患が多いのではないかと考えます。
感染:ウィルスが何らかの形で甲状腺に入り込み病気を引き起こす。亜急性甲状腺炎はその一つ。

 

甲状腺疾患というのは誤診をされ易く、全身症状だけでなく精神状態にまで影響を及ぼすため更年期や鬱、糖尿病のような症状を引き起こします。症状の出方は性別、年齢によってまちまちである為、自分の体調を総合的にみて判断する事も重要です。

 

以下に簡単な症状の出方を記載しておきますので、気になる方はチェックしてみてください。
・イライラ、興奮、動悸、多汗
・食べても太らない
・口渇感、尿糖
・月経減少、生理不順、出血過多
・下痢、微熱
・筋力低下
・脱毛
・白斑、黒ずみ、乾燥
・無気力、気分低下
・浮腫
・落ち込み
・体温低下
・嗄声
・手足の痺れ
以上の項目がいくつか当てはまるようであれば要注意です。

副甲状腺

甲状腺に付着するような形で存在している内分泌器官に副甲状腺と呼ばれる器官があります。主に体内のカルシウム調整を行う役割を担ってます。

 

副甲状腺から放出されるホルモンにパラソルモンと呼ばれるホルモンがあります。血中カルシウム濃度が低いと、骨からカルシウム成分を溶出させて腸管からのカルシウム吸収、腎臓からのカルシウム再吸収を促します。逆に血中カルシウム濃度が高くなると甲状腺からカルシトニンと呼ばれるホルモンが放出されカルシウム成分は骨に沈着し腸管からのカルシウム吸収の抑制、尿中へのカルシウム放出が促されます。腸管での吸収は十二指腸と上部小腸で行われています。

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